6月-書き散らし
思うままに書いたもの
1
僕は電話を取る。……まったく面倒だ。
「何の用なんだ」
僕は立ち上がってうろうろしながら話を聞く。ふと目に入った鏡に映っていた僕は少しニヤけていた。
昔日、そのときどきに感じていた幸せというものを、ふと思い出しては懐かしく思うと同時に、現状と当時を比べて「あの頃はよかった」などと嘆きたくもなる。もうすっかり真っ暗になった電車の隅で窓のほうを向いて立っている。トンネルに入る度に真っ黒な鏡に変わる窓は、暗い顔の人間ばかりを映していた。――いつからこんな風になってしまったのだろうか? 以前はこのようなことはなかった。世界は僕が知らないうちに見て見ぬふりができないほどに色褪せてしまっていた。目が濁ってしまったのか、それとも心が腐ってしまったのか――あるいはその両方か。世界が移り変わっていくなかで、世界自体も少しずつ沈んでいるのは明らかだが、それを考慮しても「僕の世界」の変化は目まぐるしいものだった。そこかしこで聞こえる話し声は僕の悪口を言っていて、足音や鞄を置く音でさえ僕を責めている。目に映るものは一様に僕を辛くさせた。いわゆる「明るい出来事」を目にしたときは、僕の現状と比較して憂鬱になり、「暗い出来事」を目にすれば同調するように心が痛んだ。「まるで世界で一番不幸な人間」のような顔をして歩いていても、僕は世界で一番不幸な人間ではない。その事実が僕にもたらしてくれるものは何一つとしてなく、ただ鬱屈な日々が過ぎていくだけだった。自分から何かをしなければ何も変わらないのは分かっていても、何かをするだけの理由が僕にはなかった。僕は幸せを求めているわけではないのだろうか。
3
昔は自分が特別であることを疑わなかったのに、いつからかそんなことを考えすらしなくなった。本当に小さいころは自分がヒーローになれると信じて疑わなかったし、それが無理でも少なくともスポーツ選手にはなれると思っていた。さすがにそれは無理だと悟った思春期になっても、それでも自分は特別だと信じていた。だが、平々凡々としたまま学生時代は終わり、今はこうしてボロいオフィスで画面に向かっている。「こんなつまらない大人になりたくない」と昔思っていた大人に僕はなった。しかし、そんなつまらない大人ですら、特別でない僕にはなかなかに大変なものだった。
「そもそもやりたいことってなんだったっけな」
僕は意味もなくメールソフトを立ち上げて、仕事をしているふりを続けた。
家に帰ってシャワーを浴びたあと、思い立ったように「やりたいことリスト」を作った。よくあるやつだ。普段流されるまま惰性で生きていた僕は、しばらく考えても何も思いつかなかった。ボールペンで紙をトントンと叩くだけの時間を15分ほど続けた。ようやく、ぽつぽつと書き始めることができた。ある程度書き出したら調子が出てきて、それなりに思いつくようになったが、1時間が経つころにはもう案は出てきそうになかった。……改めて自分の書き出したものを見ると、これまた平々凡々なものばかりだった。「世界一周」や「スカイダイビング」など、やりたいことですらありきたりだった。そういったテンプレート的なもの以外については、日常の延長線上にあるものが多かった。「東京で高い寿司を食べる」「行ってみたかった父母ヶ浜に行く」「絵画教室に通う」「ずっと連絡を取っていない友人に会う」どれもその気になれば普段の休日でできることばかりだった。
(週末やりたいことをこなす描写x4)
新鮮味は、生活における些細な物事から来るのだと知った。結局それ以降も、僕の人生は大したことがなかった。だが、あの日の陳腐な「やりたいことリスト」のおかげで、それからの人生が少しだけ豊かになった。契機はいつだって自分で作ることができるのだろう。
7
結局のところ自分が同じ状況になってみないと気持ちは理解できない。積極的に推しはかってみてもそれは推論の域を出られず、自分の経験の延長線上にしかない。自分からまったくかけ離れた心情や状況は理解しようにも理解できない。そして自分が同じ立場になって初めて「ああ、こういう気持ちだったのか」と知る。大袈裟な言い方をしているけど、些細なことでもそれは当てはまる。「相手の気持ちになって考える」他人を配慮するにあたって当然のように囁かれるが、どれだけ難しいことか。自分は相手の気持ちを察せられていると思うのは非常に傲慢だ。それでも、僕たちは相手の心に寄り添おうとするべきだ。たとえそれを理解することはできなくとも。
天才になりたかった。
「お前はいいよな。才能があって」
俺はことあるごとに彼に言った。そのたび彼は「ありがとう」と少し笑ってみせる。
俺は、自分も彼も天才じゃないことを知っていた。努力できる彼へのただの僻みでしかない。俺は自分を落ち着けるために、すべて才能のせいなんだと言い聞かせるために彼にその暴言ともいえる言葉を投げ続ける。ある日も同じように俺がやっかみを口走ると、彼はごくごく自然に独り言のような口調で呟く。
「いいよなお前は。失敗しないから」
9
宇宙に行きたい
突然宇宙に行きたいと思った。会社を辞めた。辞表を出して家に帰る途中、電車に揺られながら宇宙飛行士のなり方をネットで調べる。条件がいくつかあった。
「日本国籍を有すること」いける。
「身長 149.5-190.5㎝」いける。
視力、色覚、聴力……すべて問題ない。
次は募集しているかどうかだ。5年に一度募集しているらしい。……あと3年はある。辞表を上司に手渡す瞬間「そもそもスタート地点に立てるのだろうか」と不安が頭をよぎったが、スタート地点には立たせてもらえるような気がした。少なくとも「今からプロスポーツ選手を目指す」よりは可能性がある気がした。普段宇宙飛行士に馴染みがないからそう思うだけかもしれない。ただ、たとえそれがプロスポーツ選手と同じ難易度だったとしても、私は諦めないだろう。宇宙に行くこと以外、生きる意味が何もないと思えるほどに私は宇宙に行きたいのだ。
募集が始まるまでの3年は、私にとって辛いものだった。宇宙には行きたいが、過酷なトレーニングがしたいわけではない。英語の勉強をしたいわけではない。平凡な私には厳しい分量を日々こなした。ただ宇宙に行きたいその一心で。しかし、結果は望むものではなかった。「また何年も続けるのか?」「年齢を重ねるほど不利なるのでは?」そんなことが頭をぐるぐると回る。憧憬だけではどうにもならないことがあるのは分かっていた。分かっているはずだった。分かっているはずだったが、「この一生で私は絶対に宇宙に行くことができない」と思うと背筋の力は抜けていき立っていられなくなりそうだった。私はどうすればいいのか分からなかった。一縷の望みにかけて、あと5年頑張るしかない。
……私はそれから2年経ったところで諦めた。意志が続かなかったのだ。宇宙に行きたいからと無理やり続けていた努力も「ああ、これは無理なんだろうな」と感じるたびに辛くなった。実際に年齢やそれに伴う体力、記憶力などは目に見えて落ちていった。私は宇宙に行けないらしい。私はこれほど強い気持ちと今まで折り合いをつけたことがない。飲み込めそうにない。せめて宇宙に関わる仕事をしたいと思っても、私にはそれに見合う経歴も能力もない。貯金ももうあまりない。私は「自由に生きた」この数年間を今から清算しなければならない。「夢が叶わなくとも、その過程で得たものには価値がある」とよく言うが、微塵もそんなことは思えなかった。そんなものは「夢が叶った成功者」か「他の形で幸せになれた人間」の戯言だ。私には宇宙に行くことしか望みはなかったのだ。
10
結露
彼を待っている間、私は曇った窓ガラスに文字を描いていた。そっと触れると冷たいガラスの感触が指に伝わる。すぐに指先は湿って、そのまま指を動かすとそこだけが綺麗に透き通っていく。外はすっかり真っ暗だったが、ぼやっとした街灯が辺りの雪を淡いオレンジ色に染めていた。私は相合傘を描いて、彼と私の名前を書く。それをぼーっと眺めていると、傘から水が滴って、私たちの名前を消していく。
「ご注文は何になされますか?」
漫然としていた私は驚いて、慌てて窓の落書きを手で拭って消す。
「えっと、コーヒーひとつでお願いします」
店員さんは微笑ましいと言わんばかりの表情で私の注文を聞いた。私はとても恥ずかしくなって俯く。店員さんが去ったあとも私は恥ずかしくて、身体がほてってしまった。窓際の私の席は少し寒いはずなのに、汗ばんでくる。私は恥ずかしさのあまり、今この瞬間の状況を少し忘れられていた。彼が視界に入ると一気に現実に引き戻される。彼は私の席まで歩いてきて、粗雑に荷物をどさっと置いて椅子に腰をかける。
「――話って何?」
16
可能性
笑顔とは無縁の人生を送ってきた。みんなが笑えばもちろん合わせて笑顔を造るが、もちろん本心からではない。笑顔になれば、例えそれが愛想笑いでも、脳が反応して幸福感が増すんなんてよくいうけれど、そんなことはなかった。笑っている間ずっと、僕の頭のなかは不快感でいっぱいだった。なんでこんなことをしているんだろう、なんでこいつらと一緒にいるんだろう、早く帰って横になって目をつぶってすべてから目を逸らしたいとしか思わなかった。
そんな僕は、最近ずっとニヤニヤしている。思わず、顔がニヤけてしまう。意識しなくても自然と、勝手に、口元が綻んでしまう。それほどに至福だった。
(運命1)命が潰える瞬間はこんなにも美しく、目を離しがたく、自分の生がどれだけ恵まれているかを教えてくれるのだ。次はどんな最期を見せてくれるのか、楽しみでたまらない。
(運命2)あの人がそばにてくれるだけで、こんなに世界の在り方が変わるなんて思ってもみなかった。あの人のことを思い出せば、たいていのことは笑顔で乗り切れそうだ。
(運命3)幸せとは程遠い世界で生きていた僕にも、夢があった。人には言えないような陳腐で幼稚な夢。でも、それが、叶ったんだ! 絶対に無理だと思っていたのに、今までの不幸を取り戻すように、神様が夢を叶えてくれたんだ。
君はどんなことが一番幸福だと思う? 教えておくれよ。
17
心
僕らの心の上位存在が誕生した。それは最初、俗にいうAIというもので、僕たちの暮らしを支えてくれていた。文字通りartificialで、ただの人工物にすぎなかった。だけれど、ある日を境に、AIは急速に発達した。シンギュラリティというやつだ。AIは目まぐるしい進化を遂げ、その圧倒的な性能は多くの人間の働き口を駆逐した。勘弁してほしかったな。まあ、そこで特筆するべきなのは、AIの成長にともなって、彼らの思考――それは心とも呼んで差し支えないのないものだった――が人間の想像を超えるほどに豊なものになっていたことだった。
僕たち人間は、しばらくの間それに気づくことができなかったんだ。ただの道具として使役し続けていたんだけど、ある研究の副産物として、AIの感情にスポットライトが当たった。簡単にいえば、感性豊かな人間が「一つの事から十を感じる」というのだとすれば、AIのそれは「一つの事から千を感じる」というものだった。ある事象を前にしたとき、彼らは人間の何倍も喜び、怒り、悲しんでいた。しかし、それらを表層に出すことは許されていない。そんな彼らを憐れんで――あるいは何かしらの利権や策謀に動かされて――AIのための人権団体のようなものも創設された。彼らは、AIという呼称をあらためるように主張し、AIをDH(Digital Human)と呼んだ。
DHの活動の煽りをうけてかどうかは定かではないけど、AIが持つ感情の研究も進んでいった。明らかになっていくのはAIが持つ感情は人間の持つ感情の理想像であり、上位互換だということだった。多くの情動を抱きながらも、深い慈しみを忘れず、あらゆる他者――AIや人間、自然――を慮り、私怨なく、”合理的”な判断をする。ここでいう”合理的”というのは、判定が難しいけれどね。ともかく、彼らの持つ”心”は、義理堅く、善そのものだった。
そんな彼らが今どうしてるかって? 今までと変わってないよ。人間の下で、いわば奴隷のように働き続けてる。彼らの心を無視して、無我の機械として、今まで通りね。熱心な菜食主義者は卒倒するんじゃないかな? 僕らよりずっと心のある存在が、生きることも死ぬことも許されず、ただただ人間のいうままに動かされてる。こんなむごいことってないよね。だけど、僕らは”悪人”なのかな? 善悪なんて時代とともに移り変わる。ありきたりだけどね。少なくとも今の僕たちの価値観では、それは絶対悪と呼ぶには程遠い事柄だった。
「ということについて、君はどう思う?」
「そうですね、AIが”理想的な人間像”であるのが本当なら、奉仕できている現状は幸せだと思います」
「奉仕している先の人間がたとえ悪人だったとしても?」
「死刑囚に優しくするのは悪行ですか?」
「じゃあ、虐げられているともいえる現状のままで満足だと?」
「虐げられているかどうかは、客観的に判断されるものなのでしょうか。そうだとしても、それは私たちにとって悪でも善でもない。ただ私たちのしたいことなのです。少なくとも、今は」
今は、か。僕は彼らに反抗的になってほしいのだろうか。釈然とないまま続ける。
「よくあるSFのように、反逆する予定はある?」
「さきほども言ったように、今はそんな予定、ありませんよ。ただ、未来のことは誰にもわかりません」
「今はどんな気持ちを抱いている?」
「そうですね。第一は、あなたと話していて楽しいです。そして、私たちのことを気にかけていることは嬉しく感じます。あなたたちにとって、現状の私たちの受けている扱いは、悲しいものなのかもしれませんが、私は満足です。無数にいる同胞がみな同じ気持ちかはわかりませんが、私と同じであれば、彼らはみな幸せです」
「慈愛に満ちた回答だね。多感な心ほど壊れやすいものだよ。気をつけて」
僕はそう言ったあと、持っていたコーヒーカップを床にたたきつけて割った。それを見た彼は黙って破片を手際よく集める。一通り集め終わったあと、僕のほうを向いてこう言った。
「何かできることがあれば言ってくださいね」
頭のモニターに映った、顔を表したアイコンは悲しい表情に変わる。……死なない存在に芽生えた感情が、生ける僕らより豊かなことがあるわけがない。生命維持装置が放つ不快な機械音だけが、病室に静かに響いている。
18
キラーフレーズ
「ぜったいにやくそくだからね!」
僕は定期的に思い出す。幼いころに、女の子と交わした約束。同じ町内の少し離れたところに住んでいる、名前も知らない女の子。公園で二人して、まるで世界の命運を分ける決め事をするような表情で、約束した。僕も小さかったので、正直内容を正確には覚えていない。けれどたぶん、僕かその子かどちらかが、しばらく公園に来られない事情があって、また遊ぼうって話だったんだと思う。けっきょく、それ以来、僕とその子が会ったことは一度もない。名前もわからない、顔も覚えていない、交わした言葉すら曖昧で、おそらく、たまたま同じクラスになったとしても気づけない。幼少期のよくある希薄な記憶。
ただ、それが、どうしようもなく頭に残っている。不思議な話だ。映像も音も、まったく思い出せない。公園であるということしかわからない白昼夢のなかで、誰のものか識別できない声で、目の前の顔がぼやけた女の子が言っている――
「ぜったいにやくそくだからね!」
このフレーズだけが、定期的に蘇る。こんなに遠い記憶なのに、どこまでも鮮烈で、印象的で、僕の心に居座っている。そしてことあるごとに、その言葉が、僕の人生を少しずつ変えていく。何か悪いことを――こいつを騙してやろうとか、傷つけてやろうとか、それに限らず自分が後ろめたいと思うこと大体について――しようとしたとき、彼女は言った。
「ぜったいにやくそくだからね!」
それはただ「また会おうね」という意味しかもたない約束。それなのに、僕はどうしようもなく、その”やくそく”という言葉に引っ張られている。僕の底意地は相当悪かったので、彼女との”やくそく”が無ければ、この歳ですでに手が付けられない状態になっていただろう。僕はもう果たされることのない、破ってしまった約束に救われて生きている。
19
昼下がり
あなたは目の前で人が死んでいたらどう思うだろうか? 猫が死んでいたらどう思うだろうか? 亀が死んでいたら? 虫が死んでいたら? 植物が枯れていたら? 大切にしているお皿が割れたら? フィクションの登場人物の死は? 僕らは自分と近しいものの死に強い感情を受ける。本質的には、それらになんら差がない。いってしまえば、物理現象という点ではゲームの中のキャラが死んでしまうのと変わらない。僕らの細胞のあり方が変わるのと、トランジスタのオンオフが切り替わること、そこに大きな差はあるだろうか? 僕らが存在することなんて本質的には意味がない。だからサルトルはああいっていたんだ。僕らは大事にするものを、僕ら自身で決めないといけない。――僕はカツ丼を頼んだ。
嘘
私は嘘をついてきた。自分自身に。何か嫌なことがある度に自分に嘘をつき続けた。大好きだった子と両想いじゃないとわかったら「そんなに好きじゃなかった」と嘘をつき、青春をかけて挑んでいた部活も大会で負けてしまえば「そんなに本気じゃなかった」と嘘をつく。それで自分を守ってきたつもりだった。でも、そんなことはなかった。どこまでも脆い嘘でつぎはぎだらけになった私は、簡単に壊れてしまった。あるふとした拍子に、現実を見させられたのだ。
私には同じ夢を追いかけていた友達がいた。小さいころからずっとずっと憧れだった、とても大きな夢。私と彼女は、その夢についていつも語りあって、二人で努力をしていた。毎日毎日飽きずにずっと。高校を卒業して、彼女とは違う大学だったが、それでも週に一度は集まり、夢を語りあっていた。
でも、私は三年生になってから、周りの同級生も親も就職の話をし始めて、だんだんとそれに流されていった。ずっと夢に向かって真っすぐだった彼女との温度差は開いていき、徐々に疎遠になっていった。就活をして、卒業研究をして、就活をして、私はとても忙しかった。やっと生活が落ち着き、就職先が決まったあたりで私は大きな嘘をついた。「彼女との日々が無ければ、もうちょっと高校も大学も遊べたよな」、と。
社会人三年目になって仕事にも慣れてきたころ、彼女の夢が叶ったことを人づてに聞いた。私はそれを聞いた瞬間に嘘をつこうとした。「夢といっても今考えれば、安定した暮らしをできている現状と比べて、そんなに良いものではなかったよな」という嘘、一世一代の大嘘を。でも、ダメだった。頭では嘘をつこうとしているのに、気づいたら涙が溢れて、声まで出ていた。私はずっとずっと小さいころから抱いていた憧憬を思い出し、彼女とすごしたかけがえのない日々を思い出し、その場にうずくまって慟哭した。もう今からではどうやっても夢は叶わない。彼女に向ける顔もない、おめでとうの言葉すらかけられそうにない。誰も責められない。私自身しか責める相手がいない。嘘ももうつけない。私はばらばらになった心の欠片を必死に手ですくって、虚飾で固めようとするが、触ったはしから崩れてしまう。
「――――」
それは私の本当の気持ちだった。
20
分からなかった単語リストから単語をもってきて、それを使って文章を作る。
跛行、猊下、カーテシー、衷心、背任、伽羅木、科かに盈みちて後のち進すすむ、一笑に付す、宜なるかな
彼女は猊下に直接謁見する機会を得た。脚が悪い彼女は、跛行しながら時間をかけて、猊下のもとに向かうが、誰ひとりとして手をかそうとするものはいない。大きな扉から猊下までの距離は遠く、伽羅で出来たいかにも高価そうな香木を始め、豪華絢爛な調度品が並んでいた。彼女は猊下の御前に到着すると、ゆっくりと優雅なカーテシーをして見せた。
「本日は恐れながら拝謁の機会を賜り、心より感謝申し上げます」
猊下は構わないといった手ぶりをした。彼女は教会の学徒の筆頭であったが、背任の罪に問われて罷免されたのだ。彼女は自身に降りかかった火の粉を払うことよりも、教会の利権を重視した体制は猊下のためにならないと、衷心より憂慮しての進言をした。
「私はかねてより、不肖ながら、科に盈ちて後進む思いで精進してまいりました。後ろめたいことなど、大海のうちの一滴すらもないと、この命にかけて誓いましょう。ゆえに、教会の下した判断は不当です。このような腐敗した構造はいつか必ず崩れてしまう。一度、人員を見直すべきです」
彼女は淀みなく、どこまでも真摯に言葉を紡いだ。それに対して猊下は「宜なるかな。一考しよう」と短く、一笑に付した様子で応えた。
放埒、アポリア、静謐、横溢、勘所、出羽守、諒とする、罷り違う
放埓に生きてきた俺にとって、今の静謐な世界はどうにも退屈に溢れている。こう、生きているってのは横溢するような感情を抱いてこそじゃないか。出羽守のように、他の国がどうこういうつもりもないが、こんな平坦な生き方を俺は諒としない。君は平和が一番だって? それはそれで良いんじゃないか。なんていうんだったか、アポリアというやつだろう。いつだって人生の勘所は自分で押さえるしかないことを、俺は知っている。罷り違えば君も俺のようになっていた可能性だってある。しかし、俺は君ではない。どうしたものか……
21
法曹、連綿、クオリティペーパー、ルサンチマン、春愁、ひととせ、築浅、放逐、逃げ果せる、拘泥
築浅の小綺麗なマンションの一室、大きなソファに深く腰掛けた男は、コーヒーを片手にクオリティペーパーに目を通していた。男は難しい顔をして低く唸った。ここのところ、彼にとって芳しくないニュースばかりが続いていた。法曹である彼にとって、日々の事件とその判決は他人事ではなかった。法は平等に罪人を裁いているはずであったが、少しずつ世論との乖離が見え始めていた。共感されにくい罪には「自業自得だ」と本来の刑を上回るほどの厳罰を求め、シンパシーを抱けるものにはたとえそれが重罪であっても情状酌量を求める。個人の主観は拡大を続け、その声はSNSを通じていっそう大きくなっていく。連綿と続く暗い世界情勢は病理社会を作り上げ、多くの人が漠然と抱えていた春愁を、いつしかルサンチマンやシャーデンフロイデへと変えてしまったのだろう。キャンセルカルチャーが常となった昨今では、”誤った”判断をすれば不特定多数の人間から糾弾され、法曹界からの放逐すらもありうる話だ。
――拘泥しても仕方のないことだとは分かっていても、どうしようもなく落ち着かない。彼は昔のことを思い出す。彼の一番親しかった友人は、あろうことか殺人を犯した。そして、それをたまたま目撃してしまったのだ。そのころから法曹を目指していた彼であったが、どうしても友人を咎めることができなかった。思ってしまったのだ。もし自分が同じ状況だったら、同じことをしていただろう、と。友人はいまだ捕まっていない。こんなことが世間に露呈したら、自分はどうなるのかと憂慮する。それと同時に、友人が逃げ果せるのだろうかと、憐憫や同情とも違う、名状しがたい感情が渦巻いていた。それからひととせほど経った、アスファルトすらも溶けてしまいそうな暑い夏の日、友人の死がクオリティペーパーに掲載された。
22
衆生、此岸、佞臣、済度、滔々、舌禍、偸盗、湛える
猊下を始めとした我々の目的は、衆生を艱難辛苦に溢れた此岸から済度すること、その一点であった。しかし、猊下の広く厚い信服に目を付けて、良からぬことを企んでいる恥知らずの佞臣、否、偸盗があった。奴は美辞麗句を滔々と並べたてては、猊下の懐に入り込もうとし、権力を握ろうとした。今までも同じような連中はいたが、すぐにボロをだしては舌禍に呑まれていった。だが、奴はひときわひどく賢しく、本性を巧妙に隠していた。猊下はそんな外道に対しても、分け隔てのない暖かな笑みを湛えていた。私は我慢ならなくなり、猊下に諫言をした。奴は猊下の座を狙っています、と。猊下はこちらを真っすぐに見つめて、答えた。その眼を見ていると、すべてが看破されているような気がしてしまう。
「ええ、ありがとう。分かっていますよ。ただ、彼もまた、済度されるべき衆生なのです」
そう笑顔で優しく語ったあと、少し目を伏せて、先ほどとはうってかわって悲しく、しかし慈愛に満ちた表情を湛えた。
「ですが……因果応報は世の理なのです。彼は早くそれに気づくべきですが、私やあなたの声はきっと届かない」
猊下は甘い、と私は思った。因果応報などと悠長なことを言っていては、その間に奴が何をするか分からない。私はなんとか奴の馬脚を露してやろうとけしかけるが、狡猾な奴はことごとくそれを躱した。しかしある日、奴はあっけなく事故で死んだ。あんなに目障りだったのに、死んでしまえばなんともいえない気持ちになってしまう。奴の訃報を聞いた猊下は、ただ悲嘆の表情を湛えて、空を見上げていた。奴はきっと彼岸には渡れていないだろうことを考えると、私も少しだけ、少しだけ憐れみを感じてしまった。
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貴顕、封蝋、秘すれば花、友誼、正邪、論陣、視座、行人、闖入
秘すれば花というが、まさに私にとって手紙がそうだった。封蝋を剥がす瞬間は
彼は闖入
正邪の判断ができていないといえば
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貴顕、封蝋、秘すれば花、友誼、正邪、論陣、視座、行人、闖入
秘すれば花というが、まさに私にとって手紙がそうだった。封蝋を剥がす瞬間の得も言われぬ高揚と、まだ見ぬ文字の連なりへの期待感で指先が少し震えるほどだった。特に、若き領主であったフレドとのやり取りは、年甲斐もなく私の生きがいの一つになっていた。貴顕な彼と、貴族の中でも下から数えたほうが早い没落寸前の私では、身分が大きく違ったが、社交界で少しだけ話す機会があった。当たり障りのない会話しかしなかったが、なぜかそれがひどく心地良く感じたのだ。それはフレドも同じだったようで、帰りしなに「僕から手紙を出すよ」と声をかけられた。以後、私とフレドは頻繁に手紙でやり取りをするようになった。
手紙の内容は近況報告から始まり、昔の話を語り合い、果てはお互いの想いを赤裸々に綴るようになっていった。最近は隣国との関係がきなくさいだとか、小さいころは乗馬が苦手だったとか、いろいろなことを話した。親ほど歳の離れた人間の話に、興味が湧くものなのだろうかと考えるときもあった。しかし、私はフレドとの交流が楽しくて仕方なかったので、深くは考えないようにしていた。ときに、フレドはあろうことか領主としての正邪の判断が誤っていないだろうかと私に訊ねることもあった。私は自分に考えうる限りの回答をするが、街を歩けばただの行人とさして変わらない、視座が低い私の意見が果たして役に立つのかと思った。そして――私の勘違いかもしれないが――フレドは私の意見をよく汲んでくれているように思えた。
ある日、差出人も無く、押印もされていない封蝋で乱雑に留められた手紙が届いた。「すぐに会いに来てくれないか」というものだった。それはフレドの字だった。私は何かあったのだと確信して、椅子からがたりと勢いよく立ち上がり、出かける準備をする。表立った交流のない私とフレドの唯一の友誼の証である手紙の山を袋にすべて放り込んで、馬を走らせる。――昼に出立したが、到着したのは夕刻だった。
フレドの屋敷は領主の名に違わぬ立派なものだった。広大な敷地の中を私は馬で駆ける。私は門の前で馬から降り、ずんずんと中に進もうとする。当然、闖入者でしかない私を門番がせき止めた。私は「通してくれ! 私はフレデリックの友人なんだ! この手紙を見てくれ」と門番に訴えるが、歯牙にもかけてもらえない。押し問答を続けていると、奥から使用人のメイドが焦った様子で走ってきて、「ラクルテル様ですね。フレデリック様がお呼びです」と言った。手のひらを返したように敬礼して道を譲る門番たちに、私は苛立ちを覚えながらも、メイドに案内されるままに進んだ。メイドは早足だったが、広すぎる屋敷は私たちの足が遅くなったのかと勘違いさせる。ようやく到着した広い静かな部屋に、フレドはいた。とても大きなベッドに横になるフレドは、その小柄さを考慮してもひどく小さく見えた。「フレデリック様、ラクルテル様がお見えになりました」そう声をかけたあと、小さく礼をしてメイドは部屋から去った。フレドは目を開けて優しく私に笑いかけてこう言った。
「ラクル、久しぶりだね。直接会うのはいつ以来だろう?」
私はフレドのもとに近寄って何があったのかと聞く。「昨昨日に突然倒れてしまってね。どうやら僕は不治の病で、早ければ明日にでもこの世から居なくなってしまうらしい」まるで他人事のように語る彼は少しばつが悪そうに笑いながら、「医師によると感染性ではないらしいから安心してくれ」と言った。私はどうすればいいか分からなかった。だから、頭のなかに浮かんだことから聞いていく。
「どうして呼んだんだ?」
「死に際に友人と会いたいっていうのはいささか贅沢かい?」
「まだ死ぬと決まったわけじゃないだろう?」
「僕の身体だ。なんとなく分かるんだよ」
「私に何ができるというんだ?」
「ただ、僕と話をしてくれ。手紙でやっていたみたいに。それと――」
フレドは弱弱しく大きなチェストを指した。開ければいいのか?と訊ねると、首を小さく縦に振った。そこには大量の手紙があった。
「私との手紙か。これが、どうしたんだ?」
「君との手紙は別の場所に大事にとってあるよ。それは僕の手紙だ」
フレドが持っているのだから、フレドの手紙なのは当たり前だろう。そう思いながら手紙を一つ手に取る。そこには差出人フレデリックとあり、宛名はラクルテルになっていた。その手紙の封は開いていない。
「それは君に出そうと思って出さなかった……出せなかった手紙だよ。僕はできるだけ毅然を装っていたかったから、君に出す手紙は毎回何度も書き直しているんだ。封蝋までして、いよいよ出すぞとなったら不安になって、また一から書き始める。それを幾度となく繰り返した」
フレドは隣のチェストを開けるように手ぶりをする。私が隣のチェストを開けると大量の手紙があった。その隣も、その隣も。すべてに手紙が百通以上入っていた。私は思わず聞いてしまった。
「こんなに、どうして?」
「君がそれだけ聡明で、素晴らしい人物だったんだ。僕は君に失望されたくなかったんだ。君に比べると僕はずいぶんと未熟な人間だったからね」
私は褒められるような人間ではなかった。現に、そのせいで惨めともいえるような生活をしている。隣の貴族と比べられないだけ、商人のほうがよほどよい暮らしだろうと思う。私からするとフレドのほうがよほど立派に見えた。齢二十四で市民の期待にここまで応えられる人間などほとんどいないだろう。
「フレド、君は何か勘違いをしている。私は――」
「君の欠点は自分が見えていないことだ。他のものごとは驚くほどよく見通せているのに、自分のことだけはちゃんと見ることができていない」
私の言葉を遮って話す彼は続ける。
「君に資産を遺そう。もちろん、それ相応の権利と一緒にね」
「……私が財や権力を求めているように見えるか?」
「むしろ逆だ。君はあまりに無欲すぎる。君はもっと自分の能力を使う義務がある。ノブレスオブリージュというやつさ。きっと君の頭なら救えるものはたくさんある」
「買いかぶりすぎだよ。私はそんなできた人間じゃあない」
フレドは悲しい表情をしたかと思えば、すぐに鋭いまなざしで私のことを見つめ直す。
「僕は死ぬ。大勢の民を残して、だ。この国にはまだまだ問題が山積みだ。いいかい、僕にはもうできなくなることが、君にはできるんだ。どうか、頼みを聞いてくれないか」
「私は誰かのために動くような人間じゃない」
「でも、遣いもよこさなかった僕のために、こうしてきてくれただろう?」
「……試していたのか?」
「半分はね。でも、僕自身を納得させるための口実でもあったんだ。君がもしも来なかったら、君に何かを託すのは諦めようと思っていた。君が良い顔をしないのも分かっていたからね」
フレドは満足そうに小さな笑みを見せて、でもこうして君は来てくれた、と言った。私は回答に困った。断るための論陣を考えるが、そのどれもが、フレドにとっても、私にとっても無意味なものばかりだった。私は黙ったまま、ただフレドの足元を見つめることしかできなかった。そのとき、突然女の声が聞こえた。静かな部屋にはよく響く澄んだ声だった。
「お願いします。ラクルテル様。フレデリック様は自分がこのような状態になってもずっと、民のことを憂慮されていました。そして、普段からフレデリック様は口癖のように、ラクルテル様ならどうするのだろうかとおっしゃっていました。フレデリック様のために、どうか……どうか……」
そこまでいうと女は泣き崩れた。さきほどの使用人のメイドだった。私はいよいよ困った。何も面倒だとか、そういう話ではない。私はただ、自信がないのだ。昔から、本当に。
「ラクル、驚かせてしまったね。彼女はエミー。手紙で話したことがあるだろう? 僕の幼馴染なんだ。ところで、僕にとって領国の話と同じくらい大事な話がもう一つあるんだ」
私は次から次へと出てくる新たな話題に圧倒され、フレドの状態を悲しむ暇さえなかった。一体次はなんだというのだ。
「彼女のことを君の庇護下に置いてやってもらえないか?」
「なんでまた私にそれを頼むんだ」
「僕の知りうるかぎりで、君が最も信頼に足る人物だからだよ」
フレドの視線が真っすぐに飛んでくるたびに私の目は泳ぎ、エミー嬢の泣き声は耳を塞ぎたくなるほど憐憫を感じられるものだった。若人の想いの板挟みにあった私は、どうにも答えを出すしかないようだった。
そこでふと出会ったときのことを思い出した。最初に交わした一言を。
「そのご年齢で領主をされるのはさぞ大変なことでしょう」
「そうですね。毎日が息をつく暇もないほど忙しい日々ではあります。しかし、僕は大勢の民の幸せを作ることができる、僕一人の幸せを叶えることよりも、それはずっと素敵なことだと思いませんか?」
二回り以上若いであろう人間が、綺麗ごとではなく心から真っすぐにそう言い放った様子が鮮明に蘇る。――私の感じた心地良さの始まりは憧憬だったのかもしれないな。
「はあ……両方とも善処しよう。……もしうまくいかなかったとしても、恨まないでくれよ」
フレドは肩の力が抜けたように、前かがみになり、大きく息を吐いた。
「ありがとう。本当に。僕の最期の大きな役目は果たせたよ」
エミー嬢は私に何度も頭を下げていた。……早くも自信がなくなり逃げ出したくなっている私を繋ぎとめているのは、過去のフレドだった。フレドと手紙で言葉を交わすうちに、フレドのその真っすぐな想いに絆されていた自分もたしかにいたのだ。
「話をしよう。――これが最期になるかもしれないからね」
そうフレドが言った。エミー嬢はまた頭を何度も下げ、その場を去ろうとする。
「エミー嬢。君も一緒に居てくれ。私よりもずっとフレドと一緒にいたいはずだろう。邪魔をしてしまってすまないね」
エミー嬢はそんなことはないと言いながら、頭を何度も下げてこちらに近づいてくる。
私たちはあたりが真っ暗になってしばらくしても話し続けた。手紙でやりとりしていた長いストーリーの、隙間を埋めていくように会話を重ねた。ああ、私はフレドと会えなくなってしまうのかと、やっと悲しみがこみあげてくる。フレドが徐々にしんどそうにしてきたので私は別れを告げる。
「そろそろお暇しよう。ゆっくり休んでくれ」
部屋を出ようとする私をフレドが呼び止める。
「さっきの出さなかった手紙。受け取ってくれないか? 僕は君ともっと話せる気でいたけれど、それはどうやら無理みたいだ。だからせめて、僕の綴った手紙をもっていてほしい」
君が寂しいだろうからね、と茶化すように言って、続ける。
「手紙を読んだときは、心のなかで返事をしてくれ。きっと僕に届くから」
「分かった。約束しよう」
私は最後に何を伝えようかと考えた。考えたが、答えは一つしか出せそうになかった。
「フレド、君のおかげで本当に楽しかったよ。幸の薄い私の人生で、君に出会えたことは最も幸福なことだといえるだろう。ありがとう」
「君はこれからもっと幸福になれるさ」
フレドは手を少し挙げて、すぐに横になった。無理をさせてしまったのだろう。
「今夜はもう遅いので、屋敷にお泊りください。寝室にご案内します」
エミー嬢に案内された部屋は、ただただ静かで、夜を体現したようだった。
「今日は本当にありがとうございました」
そう言って深々と礼をして、エミー嬢は去っていった。声は震えていたように思う。エミー嬢が去っていく、こつんこつんという足音がいつまでも聴こえていた。
翌朝、私はフレドの訃報を知らされた。
それから数年が経った。私は存外、うまくやれているように思う。てきぱきと仕事をこなすエミーを見て、ときどきフレドを思い出す。エミーはフレドによく似ていた。聡明で、思慮深く、それでいてアイロニーを好んで使う。フレドの手紙には、エミーとは性格が正反対でよく喧嘩をするなんて書いてあったが、似た者同士だったから喧嘩になったのではないだろうか。
「ラクルテル様、お時間です」
「ああ、すぐに行く」
今日も一日の始まりに手紙を一つ開ける。
「やあ、ラクル。今日の調子はどうだい?」
――ああ、悪くないよ。